【ニュース・イギリス】英国研究会議が2015~2016学事年度報告を公表

2016年7月25日、英国研究会議(RCUK:Research Councils UK)は、7つの研究会議の2015~2016学事年度の年次報告を発表した。 

 

毎年、英国研究会議は約£30億を、医学、生命科学から天文学、物理学、化学、工学、社会科学、経済学、環境科学、芸術・人文科学までの全ての分野の研究に投資している。2015~2016学事年度に助成された卓越した研究の深く幅のある成果は論文に表れている。

 

各研究会議の代表的な成果:

 

●The Cultural Value Projectは昨年大成功を納めた。芸術、文化の重要性の検証と、その影響をどのように我々が捉えるかという総合的な研究で、特に、政策立案者や芸術関係機関にとって大変価値のあるものである。【芸術・人文科学研究会議(AHRC:Arts&Humanities Research Council)】

 

●Quadram Instituteの建設を開始。これは£7,500万規模の食品と健康に関する最先端研究所でNorwich Research Parkにある。建設に係る設備投資は、バイオテクノロジー・生物科学研究会議(BBSRC:Biotechnology and Biological Sciences Research Council)のほか、食品研究所(IFR:Institute of Food Research)、ノーフォーク・ノーリッチ大学病院NHSファンデーショントラスト(※)やイースト・アングリア大学などによる。【BBSRC】

 

※NHSファンデーショントラストは、公益法人。

 

●英国で初めて、電力の使用量よりも生産量の方が多く国の電力供給網に送出できる低コスト省エネルギーハウスを建設。これは英国政府が新たに設定した目標である炭素排出量ゼロ住宅の試作品で、ウェールズ低炭素研究所(LCRI:Low Carbon Research Institute)のSOLCERプロジェクトの一部として建築された。【工学・物理科学研究会議(EPSRC:Engineering and Physical Sciences Research Council)】

 

●総選挙の年、経済社会研究会議(ESRC:Economic and Social Research Council)の助成によるBritish Election Study(BES)の研究は、メディアディベートの専門家を加えるとともに、各研究者が必要な分析をできるよう調査項目を作成するなど、大きく前進した。BESの対面世論調査は最終結果を正しく予想し、BESの方法論は調査結果の誤りをなくす一つの手段として称された。【ESRC】

 

●2015年秋、Jo Johnson大学・科学大臣は£2億の次世代極域研究船”RRS Sir David Attenborough”の建造(2019年より運用予定)により、海洋・極域研究を大きく前進させると表明した。【自然環境研究会議(NERC:Natural Environment Research Council)】

 

●英国の9大学を含む国際研究チームが世界で始めて重力波を探知した。米国にあるレーザー干渉型重力波天文台(LIGO:Laser Interferometer Gravitational-Wave Observatory)の探知器が捉えた重力波は宇宙の起源の解明に繋がりうるものであるが、科学技術施設会議(STFC:Science and Technology Facilities Council)はLIGOの性能向上に向け資金的・技術的貢献をした。【STFC】

 

●英国医学研究会議(MRC:Medical Research Council)は2016年2月にジカウィルスの緊急研究の実施を決め、公募により、3月に26件を採択、£330万を配分した。【MRC】

 

Paul Nurse卿は、その報告書の中で、英国の研究の卓越性と英国研究会議の役割を評価する一方、将来の研究会議とそのコミュニティについては、研究全体を俯瞰し、戦略的思考とその有効性を強化する必要性を指摘した。英国研究会議は各研究会議の枠を超えた共同研究を強化すべく、すでに最初の計画を開始した。今後も政府と協力し、研究会議に係る改革案を確実に成功させるとともに、効率的・効果的な研究支援を続けていく。

 

Research Councils UK:Research Councils publish 2015-2016 annual reports

地域 西欧
イギリス
取組レベル 政府レベルでの取組、大学等研究機関レベルでの取組
大学・研究機関の基本的役割 研究
社会との交流、産学官連携 産学官連携
研究支援 研究助成・ファンディング