【ニュース・イギリス】英国大学の保護:職員確保、移民法と研究に関する問題

2017年4月25日、下院教育委員会はEU離脱に際して、英国政府がEUからの大学職員に対して英国内での権利を保証し、高等教育のニーズに沿う新しい移民制度を制定することが必要であるという報告書 (Exiting the EU:challenges and opportunities for higher education) を発表した。

 

《EU域内からの市民に将来にわたる在留の権利を》
英国に現在在住しているEU市民のEU離脱後の在留権がどうなるかは、未だに明らかにされていない。委員会の報告書ではEU域内からの大学職員にとってのこの不確実性を直ちに改善するように求めている。又決定が遅れた場合でも、2017年末までに一方的に在留権の保証をすることで、この問題について政府による早期解決を要請している。

 

《留学生を移民数の純目標数に含めないように》
報告書は、EUのみならず、全世界から優秀な学生を英国に受け入れるため、留学生を移民数の純目標数に含めないように、政府に求めている。移民制度の改正は、大学内外の人の移動を促進し、高等教育の障害になるのではなく、必要性を反映するべきであり、学術交流や高等教育の国際的な競争を引き続き促すべきであると述べている。委員会は政府に対して、全世界から最高の人材を求めていることに積極的であるということを示すためにも、すべての研究者にTier2(熟練労働者)ビザより簡素な手続きのビザ制度の導入を勧告している。

 

《移動の自由の維持》
英国で就学している学生について、EU域内からだけでなく全留学生の最良のモデルとして障害のない開かれた方法を推奨している。ある程度規制はするものの対等で開かれた方法、例えばビザ免除措置など、移動の自由を維持するような制度を要求している。

 

《政府のEU離脱交渉の優先分野》
報告書は、英国高等教育機関が様々な課題とチャンスに直面するであろうEU離脱に備えるため、EU離脱交渉の優先分野として、人材確保、学生、研究プログラムおよび将来の研究交流をあげている。

 

《地方成長基金》
高等教育機関を支援し、経済のバランスを取り戻すため、EUからの経費支援の代替として、政府に新たに地方成長基金の設立を勧告している。そして、すべての地域がこの地方成長基金の恩恵を受けることを求めている。

 

《ホライズン2020とフレームワーク・プログラム》
政府は現在継続中のEUとの研究交流の継続を保証するためにも、英国がホライズン2020や将来のフレームワーク・プログラムに引き続き参加することを勧告している。しかし参加が不可となった場合を想定して、EUのファンディングに相当するような代替策を作るよう求めている。

 

《エラスムス・プラス・プログラム:学生と職場の交流プログラム》
報告書ではエラスムス・プラス・プログラムが学生と職員の流動性に重要であることを認めており、英国はこのプログラムへの参加を継続するべきだとしている。しかし継続が不可能であれば、ヨーロッパを越えた人材の流動性を可能にする英国独自の代替プログラムの開発を推奨している。

 

Parliament.uk:Address staffing, immigration and research concerns to protect UK universities(報告書全詳細PDFあり)

 

【関係機関の反応】

 

○ラッセルグループ(Russell Group)
下院教育委員会の報告書はまったく適切な報告をしており、EUからの学生と職員の不安をすぐにでも解消する必要がある。英国に在住し働いているEU市民の権利をはっきりさせることは優先課題である。我々は、現在ビザなしで就労できるEUからの大学の職員とその家族が現在と同じ権利を維持することを強く求めている。また、英国の大学が今後も優秀な職員や学生を、EUからだけでなく、全世界から、簡素化したビザで集め続けられることが重要である。

 

Russell Group:Response to the Education Select Committee

地域 西欧、EU
イギリス
取組レベル 政府レベルでの取組
行政機関、組織の運営 政策・経営・行動計画・評価
国際交流 国際化、学生交流
人材育成 研究人材の多様性、職員の養成・確保