【ニュース・イギリス】英国の卒業生の学歴過剰問題についての報告書―雇用者、政府そして若年層に向け警鐘

 2015年8月19日、CIPD(Chartered Institute of Personnel and Development:英公認人事教育協会)が英国の大学卒業(以下「大卒」)者の学歴過剰問題についての報告書を発表した。大卒相当の技能が必要とされない職業に従事している大卒者が多すぎるとして、現在の就職状況について警鐘を鳴らしている。報告書の主なポイントは以下の通り。
・英国はOECD加盟国中、アイスランドに次いで2番目の大学卒業率の高さ(54%)となっている。例えばドイツは31%に留まっている。
・労働市場において高度な技術を要する仕事の供給が大卒者数の増加に追いついていない現状は大部分のOECD諸国で共通であるが、特に英国で顕著である。
・英国は、大卒者のうち58.8%が大卒資格を必要とされない職に従事しており、この数字を上回るのは、ギリシャとエストニアだけである。一方、ドイツ、オランダ、スロベニアなどの職業訓練の歴史が長い国では10%以下である。
・自己申告に基づくと、英国は欧州で最も高レベルの「学歴過剰」国である。

 これらの報告に基づいて、CIPDは以下の提案をしている。

(政府へ)
・初期、高等、継続教育について大規模な検討を行い、いかにして英国がこの重要な「公的投資」を、老若問わず全ての学習者、雇用者、そして経済にとって、最大限効果的なものとできるかを評価すべきである。
・リーダーシップや管理能力を強化し、仕事の進め方を改善し、人材開発に向けた投資を増加することによって、労働現場におけるさらなる技能活用を実現するとともに、高度技能職の創出に焦点をあてた生産計画を確立すること。
・研修生、特に高技能者について、引き続き質と量を向上させる努力を行うこと。キャリアを考える上での情報提供や案内について、全ての年代がアクセスできるよう改善すること。

(雇用者へ)
・大卒技能を必要としない仕事の採用において、単に希望者をふるい落とす手段として学位を用いないよう、採用事務を見直すこと。
・大学やカレッジと協力して、卒業者向けプログラムや研修制度を含めた、若者を仕事に導入する多様なルートを設計すること。
・リーダーシップや管理能力を強化するとともに、全ての労働者が生産性を高め、その能力を最大限活用できるような機会を作り出すべく、人材開発に投資すること。

(これから就職する子どもを持つ親へ)
・子供ができるだけ多くの情報に基づいた正しい進路選択をできるよう、大学以外の可能性も含め、子供とともに考えること。

URL1: http://www.cipd.co.uk/pressoffice/press-releases/overqualification-190815.aspx
URL2: http://www.hefce.ac.uk/news/newsarchive/2015/Name,105042,en.html
URL3: http://www.universitiesuk.ac.uk/highereducation/Pages/CIPDreportongraduateskills.aspx#.VdSpEGeFMdU

地域 西欧
イギリス
取組レベル 政府レベルでの取組、大学等研究機関レベルでの取組
人材育成 学生の就職
統計、データ 統計・データ