【ニュース・イギリス】欧州連合(EU)離脱か残留かを問う国民投票(6月23日)を巡る英国高等教育機関等の反応

■2016年4月14日、ラッセルグループ(大規模研究型大学24校で構成するグループ)はウェブサイト上で、EUに属していることが、同グループの大学における世界トップレベルの研究と教育にどう影響しているかの事例を発表した。

 

世界トップレベルの研究、イノベーションを推進するために、英国は現代に求められる競争的、外向的環境にあるEUの中心であり続けるべきである。

 

研究やイノべーションは国際的な活動であり、知識や人が国境を越えて行き交うことでより効果的になる。英国が現在EUに加盟していることによって得られている、才能の自由な行き来やネットワーク、国際連携、研究活動に必要な人材や研究費といったものが、我々の大学や英国経済の競争力をもたらしているのである。いまや、国際連携による研究は一国で実施する研究と比べ1.5倍のインパクトをもたらしているというのも驚くべきことではない。

 

EUは完璧ではないが、我々が改革を支援することで、我々の大学はより利益を享受することもできる。しかし、離脱となれば、世界レベルの共同研究を推進しているヨーロッパの研究プログラムや助成金についての議論に加わることはできず、影響力を失うことになる。

 

<EUがラッセルグループ大学に与える影響例>
・EUの研究助成金の獲得額 579百万ポンド(2014~2015学事年度、医学リサーチカウンシルの予算額にほぼ匹敵。)
・大学スタッフのうち、他のEU諸国出身者数 22,880人(全体の1/5)

 

Russell Group:Russell Group universities and the European Union
Russell Group:[News]Russell Group universities and the European Union

 

■2016年4月20日、英国大学協会(UUK: Universities UK)は、同日に貴族院の科学技術委員会が発表した英国の科学分野におけるEUの影響に関するレポートについてコメントを発表した。

 

レポートでは、英国はEUの科学政策の策定に強い発言力を有しているが、EU離脱となればその戦略面での影響力がなくなる可能性があると述べている。また、同委員会の調査では、優れた研究力に基づき競争的資金を確保するという点で英国はEUの中でトップクラスであるということが示されている。

 

英国大学協会の理事長でケント大学の学長であるDame Julia Goodfellowは、“離脱によって英国はEUの科学政策への影響力を失う。これは、EUにも英国にも悪影響を与えることになる。加盟国であることで英国及びEUの研究者は、より多くの研究資源や人材、データなどを共有することができており、それは英国の大学にとっても、我々の生活をよりよくするための科学研究にとっても重要なことである。離脱によって英国はEUの支援、ネットワークの枠から外れることになり、科学・イノベーションにおいて先導的立場にいる英国の地位を脅かすことになる。”と述べた。

 

Universities UK:Response to Lords report on impact of EU membership on UK science

 

【学生への投票の呼びかけ】

 

■2016年4月14日、ビジネス・イノベーション・技能省は英国の高等教育機関に対して、国民投票の投票登録を全学生に勧めるように通知した。将来、留学先、就職先になりうるEUを離脱することで最も影響を受けるのは学生であるため、自ら投票するよう呼びかけたもの。登録の締切日は2016年6月7日。

 

GOV.UK:Ministers write to universities and colleges encouraging all students to register to vote

 

■2016年4月21日、英国ガーデアン紙は野党労働党でブレア、ブラウン政権で官僚を歴任したAlan Johnson議員が全学生組合の組合長に国民投票の登録を促進するキャンペーンを行うよう依頼したことを報道した。

 

英国学生連合(NUS: National Union of Students)の調査によると、EU残留を支持する学生が4人に3人で、離脱を支持した学生は14%のみであった。また一般的に若者の多くは残留を支持し、年齢が上に行くほど離脱を望む傾向があるが、若者はあまり投票場に足を運ばない。これを懸念した残留を支持する活動家が学生組合に呼びかけたもの。

 

Johnson議員は同文書の中で“EU離脱か否かは、人生最大の政治的決断であり、現在及び未来の大学生や、トップレベルの研究を行う高等教育機関を支えられるかどうかに大きく影響してくる。さらに、英国経済や卒業後の学生の雇用にも大きく影響するであろう。”と述べている。

 

英国学生連合の全国連合長のMegan Dunnは“我々は学生の声がこの国民投票で無視されないよう強く働きかけていく。”と語った。

 

The Guardian:EU referendum: remain campaigners seek to enlist student unions

地域 西欧
イギリス
取組レベル 政府レベルでの取組、大学等研究機関レベルでの取組
行政機関、組織の運営 政策・経営・行動計画・評価
国際交流 国際化、研究者交流
統計、データ 統計・データ