2016年10月27日付けのTimes Higher Education(THE)誌による過去10年のノーベル賞受賞者の分析によると、米国は国外、特に英国出身の科学者にとって非常に魅力的な国となっている。
10月初旬に発表された9人のノーベル賞(文学、平和賞を除く)受賞者のうち、5人は英国出身であるが、米国の機関に拠点を置いている。今年の物理学賞受賞者の1人、英国出身で現在プリンストン大学に籍を置くDuncan Haldane氏は“これは1970年代後半から1980年代に起きた典型的な現象の結果で、今年の受賞者は失われた英国世代の人たちである”と述べた。
米国出身者の10人のうち9人は受賞時も米国機関に所属していた。
一方、米国の機関に所属している受賞者の44%は外国生まれであり、その内訳は英国7人、日本4人、カナダ2人、ドイツ、中国、ロシア、イスラエルから各1人である。また、英国でも海外からの研究者召致に成功しており、2010年の物理学賞受賞のAndre Geim卿とKonstantin Novoselov卿はロシア出身でマンチェスター大学に拠点を置いている。
この結果は現在の国力を示すものではない。ノーベル賞はしばしば数十年前の研究に与えられる。“近年英国の凝縮系物理学が再び活気付いてきて、優秀な若い英国人が米国でポスドクを経験して英国に戻ってくるケースが増えている。”と前出のHaldane氏はいう。しかし、英国のEU離脱により移民規制や欧州他国との連携を難しくするようなことになれば、この英国科学の復興は脅かされるという声もある。
○ノーベル賞受賞者の出身国と受賞時の所属国の状況
Times Higher Education:Nobel prizewinners by country of origin