【ニュース・イギリス】グローバルサイエンスの新時代においても世界をリードする(大学・科学大臣発言)

6月30日、Jo Johnson大学・科学大臣が、ウェルカムトラストにて、EU国民投票後の英国の研究・イノベーションについて言及した。

 

国民投票の結果は我々が望んでいたものではないが、私は英国民の重大な決断を尊重する。我々は困難に立ち向かいつつも、ポジティブに先を見なければならない。今日は、我々の経済力の強さと英国の研究・イノベーションが世界をリードしているということを再認識するよい機会である。そして、引き続き皆さんと協力し、今後の協議において、高等教育、研究・イノベーションにとって可能な限りよい条件に持っていけるようにすることを約束する。

 

英国は2年の協議期間中はEUのメンバー国であり、そこから生ずる全ての権利と義務を有する。EU諸国の学生で英国で学んでいる者、この秋から学び始める者は、その課程を終えるまで奨学金を受ける資格を有する。我々は、EU諸国からの学生、研究者に対してオープンであり続ける。また、EUや国際スタッフの貢献を高く評価しており、彼らが英国で暮らしたり働いたりする権利がすぐに変わることはない。

 

ホライズン2020についてもこれまでどおりである。なお、英国の参加者が区別される可能性については懸念しており、欧州委員会の科学イノベーション担当欧州委員会(European Commission)のMoedas氏と緊密に連絡を取っている。

 

また、英国は、スイスのセルン(CERN)や欧州宇宙機関(ESA:European Space Agency)など、EUとは別の枠組みによる主要な研究連携においても研究をリードしている。6月には、スウェーデンの欧州核破砕中性子源(ESS:European Spallation Source)の新たな粒子加速器についても、英国が正式メンバーになるための申請をしたところである。

 

研究自体がより連携と国際化を必要としているときに、EU離脱は我々に避けて通れない新たな課題をもたらした。我々が今やるべきことは、あらゆる領域において科学面での強さを誇る英国のステータスを守るための進路を示すことである。

 

我々には長く築いてきた支援体制があり、優れた研究であればそれがどこで行われていても支援をする。また、優秀な人材の流動性が重要であることを認識し、次世代の研究者を育てるため、新たに修士学生のための奨学金の公募を始めたところである。既存の研究会議のファンディングを補完する博士課程学生のための奨学金の新設も検討している。今度の議会で、博士課程支援の状況は一新するだろう。

 

また、政府としては、世界クラスの研究が英国の経済と豊かさをもたらしていることを理解しており、政府支出見通し(Spending Review)において、科学予算を実質ベースで維持するとともに、イノベートUKを通じた助成金も維持することを示したところである。

 

第二に、英国には優れた研究施設がある。大学や既存の研究施設に加え‘The Cric(The Francis Crick Institute)’や‘Royce(Sir Henry Royce Institute)’などの新施設には、2021年までに£69億の設備投資をすることが決まっている。

 

第三に、英国は、大型ハドロンコライダーなどの世界中の主要な研究施設を利用できる。また、スクエア・キロメター・アレイ(Square Kilometre Array)のような新施設の建設計画においても主要なパートナーとなっている。

 

一方で、英国のイノベーションはうまくいっており、最新のグローバル・イノベーション・インデックスでは2位であったが、今後、EU離脱が英国の科学・イノベーションにもたらす結果を評価する必要がある。

 

 

【欧州と世界】

 

英国の研究者と企業はEUの助成プログラムをうまく活用してきた。新たな合意がどのようなものになるのか、今後の枠組計画との関係がどうなるのかを言うには早すぎるが、私は英国がその中で引き続きうまくやっていけると確信している。

 

英国の大学の知識拠点はEUができるずっと前から続いている。また、EU以外の世界との繋がりも有しており、2012年には英国の研究論文の半分近くは諸外国の研究者との共著になっている。こうした関係は今後も続いていく。しかし、そのためには、政府、研究コミュニティ、そして特に新たにできるUKリサーチ・イノベーション(UKRI:UK Research and Innovation)が協調して努力していくことが必要である。

 

 

【UKリサーチ・イノベーション(UKRI)の役割】

 

EUとの関係が変わっていく時期において、UKRIの設立が、英国の研究・イノベーションにおけるリーダーシップを支えていく上で不可欠である。今、これまで以上にこれらのコミュニティは新たな困難に直面しており、政府、欧州の枠を超えて、世界の中での研究者の利益を代表する強い一致した声が求められる。

 

政府としては、研究やイノベーションのための助成金を維持してきており、引き続き、カタパルトプログラム(特定の技術分野において科学技術・イノベーションの拠点を作るための産学連携プログラム)によるネットワークを広げていく。また、イノベーティブな企業を支援するための金融商品の開発も進めている。一方で、英国において、技術動向から特定の技術に焦点を当て、より戦略的な研究投資ができるようにするために、UKRIが必要である。

 

加えて、イノベーションは、異なる研究分野や技術が交わることによって起きており、我々の直面する課題の多くは、分野間あるいは複合分野での研究による解決が求められる。ナース・レビューにおいても、政策における分野間連携、政策立案者との間での連携不足、縦割りの助成制度が複合分野、分野間研究の取組を困難にしているということ、よりイノベーションを起こしやすくする工程の必要性が指摘されており、我々はこれらを改善していかなければならない。また、科学の設備投資にもより連携の取れた政策的手法が必要だという監査局(NAO:National Audit Office)の指摘にも注意を払わなければならない。

 

そのため、我々は、UKRIの設立に関する法律を制定しようとしている。UKRIには、7つの研究会議、イノベートUK及び新たな評議会であるリサーチ・イングランドが含まれる。

 

 

【UKRIのゴールは何か】

 

まず、UKRIは、1つの包括的なファンディング機関として、政府とは距離を置いた研究支援を行うとともに、研究・イノベーションコミュニティに強い声を届けることになる。このことは、これまで以上に世界的な課題に直面している現在、英国が世界的な研究協力に参画する機会を最大化するためにも必要である。一方で、各研究会議の長にはそれぞれの自治権が残され、各研究会議において、その分野における最も優れた研究・イノベーション活動を助成するとともに、職員の雇用や各分野のコミュニティへの支援等を行うことができる。

 

第二に、UKRIを通じ、研究・イノベーションコミュニティによって組織的に作られた国としての研究・イノベーション政策に基づき、年間の政府予算£6億以上を、UKRIの9つの構成機関における研究計画を俯瞰した上で調整・配分することになる。

 

分野を超えて速やかに政策的に動けることは、グローバル・チャレンジ研究基金(Global Challenges Research fund:新興国が直面する課題解決に最先端の研究で取り組むことを支援するプログラムで、英国政府が£15億を支援)においても重要である。この基金は、英国の研究の世界に対するインパクトを強めることにつながる。

 

また、今こそ、英国が地球課題に取り組む姿を対外的に見せるときであり、この取組のために、新たに£100万の“ニュートン賞”を来年から開始することとした。毎年、プログラムの相手国の経済開発や社会福祉、もしくは世界中の貧困課題への取組を促進した優れた研究や革新的なプロジェクトを表彰する。

 

第三に、UKRIは研究による発見から商業化につなげる役割を担う。イノベートUKは、引き続き企業寄りのイノベーションに焦点を置き、別の予算で企業コミュニティを支援する一方で、イノベーション戦略に基づき、研究ベースのものからイノベーションへの加速支援を行うというより明確な権限を有することになる。

 

また、リサーチ・イングランドは、イングランド高等教育会議(HEFCE:Higher Education Funding Council for England)の研究及び知識交換機能を、高等教育イノベーション基金(HEIF:Higher Education Innovation Fund)も含めて担うことになる。

 

さらに、教育と研究をより連携させるため、法案には、学生局(OfS:Office for Students)とUKRIの間での共同事業や情報共有を求めることが含まれている。

 

研究会議間の予算配分は、最終的にはこれまで同様、大臣が決めることになるが、UKRIの創設により、全ての研究・イノベーションコミュニティが自分たちで優先度を決め、最適な予算配分について大臣に助言するための新たなメカニズムができるであろう。

 

 

【結論:5つの試金石】

 

今後の欧州との新たな関係という現実に適応するため、政府は引き続き、研究・イノベーションコミュニティと緊密に連携を取る必要がある。

 

また、国の研究・イノベーションのための取組が将来に適合するようなものにしなければならない。これらの改革を成功させるための試金石が5つある。

 

1. 国の研究・イノベーション政策をより関係の深い姿として将来見せてくれるような、世界クラスの研究者や技術者を育て、ひきつけているか。

 

2. 英国の科学を支援し、国際連携を追及することについて、政府内で説明したり、国民あるいは世界に向けて説明してくれる、研究・イノベーションのための強い擁護者がいるか。

 

3. 研究の成果、特に新たな新興技術を常にビジネスチャンスに生かし、世界のイノベーションリーダーとしての英国の評価を守ろうとしているか。

 

4. 多分野・分野間研究をより支援することで、社会の最も困難な課題により効果的に取り組み、世界の中で英国主導のブレークスルーだと認識されているか。

 

5. 将来の世代のために、学術の自治の重要な要素を守ってきたか。それは、ホールデンの原則とデュアルサポートを通して実現されるもので、これまで英国の学術界のよさを支えてきたものである。

 

我々はこれらの問いに応え、機会を広げることができる。すでにうまくいっているものを守るだけでなく、現在直面している困難を我々の強みに変えることができる。

 

今、まさにその方向に向かってともに働かねばならない。我々は英国の研究・イノベーションの優れた点を維持するとともに、グローバルサイエンスの新時代においても、比類なきリーダーシップを強固にしていくチャンスを有している。

 

 

GOV.UK:Leading the world in the new age of global science

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