【ニュース・アメリカ】米国科学工学医学アカデミー、医用画像に使用されるアイソトープの将来的な不足を警告

米国科学工学医学アカデミー(National Academies of Sciences, Engineering, and Medicine)は、医用画像向けに世界的に利用されているアイソトープの需要・供給に関する報告書「医用画像のためのモリブデン99(Molybdenum-99 for Medical Imaging)」を発表した。本報告書は、連邦議会から作成を義務付けられたもので、医用画像に使用される「モリブデン99(molybdenum-99)」及び「テクネチウム99m(technetium-99m)」と、関連する医用アイソトープの「ヨード131(iodine-131)」及び「キセノン133(xenon-133)」の製造・使用状況を検証した他、「モリブデン99」の製造によって発生する濃縮ウラン(highly enriched uranium:HEU)の排除に見られる進歩の評価を行った。この結果、「モリブデン99」及び「テクネチウム99m」は、現時点では国内及び世界における需要を満たしていることが判明したが、2016年10月末にカナダの原子炉の稼働が停止される予定であることから「モリブデン99」の供給が大幅に減少すると予測され、「モリブデン99」及び「テクネチウム99m」が不足する可能性があると警告している。カナダは、2016年10月から原子炉を完全に停止させる2018年3月までの間は、世界的に深刻な不足が生じた場合のみ「モリブデン99」の製造を再開するとしている。同報告書は、米国政府はカナダ政府と協力し、必要があれば2016年10月~2018年3月の期間中に「モリブデン99」の供給を確実に再開できる体制を整えておくことを提案している。米国は現在、世界中で製造される「モリブデン99」の約半分を消費しているが、2009~2010年度から2014~2015年度の間に消費量は25%減となっており、同報告書は、米国内での需要が今後5年以内に急増する可能性は低いとしながらも、特にアジア市場における使用の増加から、国外での需要が増加する可能性が高いと予測している。また、同報告書は、2012年米国医用アイソトープ製造法(American Medical Isotopes Production Act of 2012)及びエネルギー省(Department of Energy)の米国核安全保障局(National Nuclear Security Administration:NNSA)による財政支援により、医療目的の「モリブデン99」の国内生産が民間セクタに働きかけられたが、カナダにおける製造が停止される前に米国内で商業生産に至る状況にはないことを指摘している。さらには、「モリブデン99」製造に伴って発生する多量のHEUを含む廃棄物に関する懸念も表明している。

 

なお、本報告書は、以下より閲覧可能。
The National Academies Press:Molybdenum-99 for Medical Imaging

 

National Academies of Sciences, Engineering, and Medicine:New Report Warns of Potential Supply Shortage of the Medical Isotopes Molybdenum-99 and Technetium-99m in U.S.

地域 北米
アメリカ
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
大学・研究機関の基本的役割 研究
その他 その他