【ニュース・アメリカ】「CRISPR-Cas9」などを含む遺伝子編集技術、意図しない標的外の突然変異を引き起こす可能性が判明

コロンビア大学医療センター(Columbia University Medical Center、ニューヨーク州)のゲノム医療研究所(Institute of Genomic Medicine)及び人間栄養研究所(Institute of Human Nutrition)において眼科学・病理学・細胞生物学准教授を務めるスティーブン・ツァン(Stephen Tsang)氏らは、臨床試験段階への移行が開始された「CRISPR-Cas9」などを含む遺伝子編集技術に関する研究論文を発表し、これらの遺伝子編集技術が、意図しないゲノムの突然変異を多数引き起こす可能性があることを明らかにした。

 

ツァン氏は、「CRISPR」技術の導入により、単一ヌクレオチド突然変異や、ゲノムの非コード領域における突然変異を含む、標的外の突然変異が引き起こされる危険性があることを科学コミュニティが認識しておくことは重要とコメントしている。「CRISPR」技術を導入した最初の臨床試験は、現在中国において実施中で、米国では2018年に開始予定となっているが、「CRISPR」で特定のゲノム配列を対象としても、それ以外の箇所に影響を与えることもあるという。

 

ツァン氏らは、同研究チームによる「CRISPR」技術を導入した過去の研究において使用したマウスのゲノム全体の配列を解読し、全ての突然変異を探した結果、盲目の原因となる遺伝子の修正には成功した一方で、2つの別々の遺伝子治療を受けた個体のゲノムにおいて、単一ヌクレオチドの突然変異が1,500件超と、さらに大規模な欠失及び挿入が100件超確認された。しかし、これらのDNAの突然変異の中で、標的外への影響を見つける上で一般的に使用されるコンピュータ・アルゴリズムで予測されていたものは1件もなかった。ツァン氏らは、編集の有効性を向上させるために、「CRISPR」システムの構成要素の改善に取り組んでいる。なお、本研究論文は、2017年5月30日付でオンライン版「ネイチャー・メソッド(Nature Methods)」誌に掲載されている。

 

2017年5月30日

 

Columbia University Medical Center:CRISPR Gene Editing Can Cause Hundreds of Unintended Mutations

地域 北米
アメリカ
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
大学・研究機関の基本的役割 研究