【海外センターレポート・ブラジル】ブラジルにおける大学入試について

ブラジルでは、10月末と11月に国内の主要な公立・私立大学の入学試験が行われます。ブラジルにおける主な大学入試は、各大学の独自の試験、全国高等教育試験(Enem)の2つです。中等教育課程と予備校の学生にとってのメインイベントであるEnemの2015年の受験者は770万人で、2014年の870万人を下回りました。一方で、その他のより小規模な大学入試の受験者は10万人以上に上りました。

大学入試は、ブラジルの大学で学部課程を履修するのに適した学生を選抜するものですが、多くの大学において、受験者が定員数を大幅にオーバーしています。例えばサンパウロ大学(USP)の入試倍率は約14,7%、サンパウロ州立大学(UNESP)では約13,9%に上り、医学部に至っては216,4%という高い数値です。入試を受ける代わりに大学に入学する選択肢として、既に別の大学を卒業している人が再び学部課程に入学する場合の特別措置や、外国人向けに用意されたプログラムがありますが、大部分の学生は、大学入試を突破して大学に入ります。

試験は様々な分野の知識を問う問題で構成されますが、人文科学(歴史・地理)、自然科学(物理・化学・生物)、言語(国語・外国語)、数学に大別されます。入学試験としてEnemを用いる統一選抜システム(Sisu)を採用しない大学は独自の選抜試験を設けており、試験の形式は多岐に亘ります。

Enemは、複数の選択肢から選ぶ形式の180の設問(人文科学45問、自然科学45問、言語45問、数学45問)と、小論文で構成されます。1月頃に結果が発表された後、Sisuを通じて国内の全ての連邦大学とその他複数の大学の定員が発表され、その中で、受験生はEnemの成績に基づき定員枠を競います。ブラジルで第二の規模の入試であるFuvest(サンパウロ大学への入学者を選抜する試験)は2段階で行われます。11月に行われる第一段階は歴史、地理、物理、化学、生物、数学、国語、英語の複数の選択肢から選ぶ90問のテストで、各学部によって定められた基準点で受験生を選抜し、合格者が第二段階に進みます。第二段階は翌年1月に、3日間にわたって行われ、最初の2日は全受験者共通の試験があり、最終日は志望学部別の特定科目の試験があります。

昨今、大学入試に関しては多くの問題が指摘されています。例えば、私立の学校で中等教育を受けた、あるいは予備校に通うことができた生徒が恩恵を受けて、経済的に恵まれない公立学校の生徒には機会が与えられないという選抜の問題から、一定の定員枠に特定人種の学生を確保するという方策に至るまでその議論の対象は様々ですが、それらの問題は、ブラジル社会全体、ブラジル人が直面する社会・教育に関する種々の議論を反映するものです。

2015年10月24日、25日に実施されたEnemの内容は、物議を醸すものでした。「ブラジルにおける女性への暴力」をテーマとする小論文の問題で、シモーヌ・ド・ボーヴォワールの作品の一部が引用され、それが“教義的”で、ジェンダー・イデオロギーを強要するものであるとの批判を集めました。「家族、道徳に対する侮辱」と主張する市議会議員もいたほどです。
従って、大学入試が国の教育の状況を表す度合いが大きいほど、大学入試問題を分析することは意義深いことで、そこには、ブラジル社会の構造を直接反映する特色(問題のあるものを含む)を確認することができます。

サンパウロ海外アドバイザー  二宮 正人

地域 中南米
ブラジル
取組レベル 政府レベルでの取組、大学等研究機関レベルでの取組
行政機関、組織の運営 政策・経営・行動計画・評価
大学・研究機関の基本的役割 教育
人材育成 入試・学生募集、学生の多様性