【海外センターレポート・ブラジル】ブラジルにおける学生向け融資プログラムについて

今回は、2016年1月の報告書で触れました、私立大学の学部生を対象とした「高等教育機関の学生向け融資基金」(Fundo de Financiamento Estudantil、FIES)を取り上げます。2015年からの国内の不況を受け、このプログラムによる新規の融資契約の件数は731,000(2014年)から311,000(2015年)と著しく低下し、需要は減っていないにもかかわらず、実に50%も低下しました(*1)。

 

2016年もこの不況が続くと見込まれる中、FIESが資金不足で融資を提供できなかった分、その穴を埋めるための新たな民間融資プログラム創設が議論されることになりました。これまでも、金融機関や教育会社が融資プログラムを実施してきましたが、今年は、契約者を増やすためそれらのプログラムの改善が行われるものと思われます。

 

その改善策の一つが、金利水準の低下や一定期間の利息免除ですが、それでも、FIESの年間利息率6.5%には及びません。銀行による融資プログラムの場合、月間2.4%、年間30%に上ります(*2)。

 

従って、金利の安さで言えばFIESに代わるものはなく、これらのプログラムは常にFIESの融資が受けられない人にとっての二次的選択肢になっています。2015年の不況でこれらのプログラムが強化され、2016年には成長が見込まれるにもかかわらず、低所得層の家庭出身者の大学進学の機会を本当の意味で拡大するという点では、未だ不十分であるといえます。

 

民間融資プログラムが二次的な選択肢になっているという状況は、運営する金融機関等による、本当の意味でのインクルージョンのための変革が必要であることを意味します。政府によるこの分野への予算削減は特に深刻で、一刻も早く元の水準に戻ることが望まれます。というのは、低所得者による大学進学支援の需要を完全に補完することができる民間主導のプログラムが存在しないためであり、たとえ存在したとしても、それにより政府が有する社会的責任が免除されることはありません。学生側は、契約を結ぶに当たっては慎重に検討することが必要です。というのは、これは長期的な投資で、特に社会人になって間もない頃に債務不履行に陥ってしまうと、様々な深刻な問題が起こりかねないからです。大学卒業後すぐに就職できない学生も少なくない中で、卒業時に融資金額の大半を返済できていないと、返済金額は増えていきます。

 

例えば米国では、大学生の約60%(*3)が融資契約を結ぶと言われていますが、返済義務のない学部生向けの融資(私立大学が独自に設ける奨学金制度など)がある一方で、ブラジルの学生向け融資プログラムはあくまで二次的な選択肢として考えられています。

 

従って、ブラジルにおいて民間の融資プログラムは、専門家に言わせれば最後の手段として存在する選択肢でしかないというのが現状です。

 

サンパウロ海外アドバイザー 二宮 正人

 

*1:2015年5月5日付ニュースサイト「G1」配信記事「Fiesの新規契約数、2014年から2015年にかけ約50%減少」を参照。
*2:2016年2月6日付ニュースサイト「O DIA」配信記事「学生向け民間融資プログラムはFiesに代わる選択肢に」を参照。
*3:Facts & Figures: Almanac of Higher Education. The Chronical of Higher Education. を参照。

地域 中南米
ブラジル
取組レベル 政府レベルでの取組
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統計、データ 統計・データ
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