【海外センターレポート・ブラジル】「Capes奨学金の凍結」について

ブラジルにおける学術研究の最も重要な公的機関の一つに、教育省管轄のCapes(ハイレベル人材養成業務統括所)があります。ブラジル国内の修士課程、博士課程のコースの拡大・確立を目的に活動する機関で、奨学金の給付、大学院生への支援・補助を行い、国内の学術研究成果の普及・公開、さらに外国との学術協力(現時点で24カ国との二国間協定を実現(*1))の促進に努めています。CNPq(国家科学技術開発審議会)等の他の学術研究機関とは異なり、Capesは、3年毎に修士・博士課程のコースの評価を行います。この評価の目的は、大学院過程の教育の質を維持し、評価により確認される地域間の格差の是正を目指し、修士・博士課程のプログラム創設と拡大を進めるというものです。この評価は、学術研究に携わる人々によって行われ、指導教官、学生の双方の学術研究の成果、評価対象の研究科の社会への影響・貢献度をもとに行われます。評価の結果は、補助金の分配、留学プログラム適用等のための参考となります(*2)。

 

しかし、4月初めに、Capesは新たな奨学金給付対象の学生の登録を最大2ヶ月間停止する旨を各大学に通知しました。このことは、全国の大学院生の7千件以上(現在Capesが給付する奨学金の総額9%に相当)の奨学金の凍結を意味します。しかし、Capesはこの給付停止の措置について、目下の国の経済危機が高等教育に及ぼしている悪影響の結果であるとの説明はしていません。Capesの理事長によれば、経費削減ではなく、3月分の奨学金給付の枠が埋まらないことへの対策であるとのことです。しかし、誰もがこのように理解したわけではありません。全国大学院生協会(Associação Nacional de Pós-Graduandos)の会長によれば、奨学生の枠が埋まらないのは、3月は多くの学生が学位を取得し奨学生の対象から外れることに起因し、新たな奨学生の枠が設けられるのはそのためです。また、同会長は奨学生の枠が埋まらないのは一時的なことで、通常は応募者が多く競争率が激しいと明言しています。この奨学金給付の一時停止は政府の経費削減策であると理解でき、継続的な停止につながる恐れもあるとのことです(*3)。2ヶ月間の給付停止を発表した約2週間後、Capesは、7千件のうち2千件以上は凍結を解除し、給付を再開するが、残りについては検討を続けると発表しました(*4)。給付停止が経費削減のためであると公に発表されたわけではないものの、奨学金は段階的にではあるものの確実に返済されているにも関わらず、ブラジルにおける学術研究の奨励・促進を目的とする主要機関が、奨学金プログラムを改善するという名目で給付を停止し、学業のための支援を必要とする学生に即時的に悪影響をもたらすことは、決して建設的な行為とはいえません。

 

サンパウロ海外アドバイザー 二宮 正人

 

*1:CAPESのウェブサイト内「国外学術協力(Cooperação internacional)」のページ参照。2016年4月25日アクセス
*2:CAPESのウェブサイト内「評価(Avaliação)」のページ参照。2016年4月25日アクセス
*3:ニュースサイト「JORNAL EXTRA」2016年4月2日付記事「Capesが全国の大学院生の7千件以上の奨学金給付を凍結」 より。2016年4月25日アクセス
*4:ニュースサイト「JORNAL G1」2016年4月19日付記事「Capesが、凍結中の大学院生への7千件の奨学金のうち、2200件を解除」 より。2016年4月25日アクセス

地域 中南米
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