【ニュース・タイ】タイと不平等な課題

政治家、政策担当者、一般市民は、ここ最近、タイ政府が掲げる経済モデルである「タイランド4.0」に注目している。タイランド4.0は、これから来るであろうデジタル経済のために国を挙げて準備することを目指しているが、いまだこの高い目標の達成を妨げるさまざまな課題が残っている。その中には、タイの教育の全体的な質の問題があり、これは世界の平均を下回っており、国の教育制度の不平等が拡大している。
これらの問題は、タイランド4.0アジェンダの妨げとなっている。もしタイがこの目標達成を願うならば、この教育における不平等の解消に取り組むことが不可欠である。

 

少数の選ばれた学校の「最も優秀な学生」だけに目を向けるのではなく、どのようにして、学生にスキルを身につけさせ、また高い競争力のある労働力として育成するために、どのような教育システムを学生に対して準備したらよいのか。

 

タイは資源を持っていないわけではない。タイは教育に対して多額の資金を投入してきた。例えば、タイ政府は2015年に年間予算2.58兆バーツの19.35%を教育に費やした。これは予算において最も多く占めていたが、残念なことに、巨額の資金投入をしても、様々な国際的なテストで示されているように、タイの学生の主要科目での得点は世界平均を下回っており、学習の改善にはつながってこなかった。
これらのテストの結果は、タイの学生が数学、科学、英語の出来に関しては、依然として近隣諸国と比べても遅れを取っていることを示している。 Pearsonが出版した「学習曲線、国の授業、教育実績」レポートでは、タイの教育制度は2014年に参加した40カ国のうち、35位に位置すると説明している。
2016年に経済協力開発機構(Organisation for Economic Co-operation and Development:OECD)が発表した最新の国際学生評価プログラム(Programme for International Student Assessment:PISA)において、タイは72カ国のうち55位にランクされている。数学と科学の読解においては、タイはそれぞれ54位と57位にランクされている。

 

一体何が問題なのか。多額の資金を投入しても、教育を改善するのに十分ではないのだろうか。これは、教育にどれだけの費用を費やすのではなく、どのように使われるかということが問題なのである。
「我々に欠けているのは金額ではなく、費用が効率的かつ効果的に使われていないことこそが問題だ」と教育省の予算部門の政策分析官であるPumsaran Tongliamnark氏は最近のセミナーでそう述べた。

 

テスト結果にはタイの教育システムの欠点が反映されている一方、この失敗のもっとも心配すべき側面は、教育システムのどの段階においても存在している大きな不平等である。
タイは教育のパラドックスに囚われている。それは国として世界の舞台で戦うために、ベストを目指し、また優秀な生徒を育てることに力を入れるべきなのか。もしくは、遅れを取っている学生をもっと考慮すべきなのか。タイは両方の目標を達成することが可能なのだろうか?

 

デジタル経済と第4次産業革命の話題を取り上げる前に、問題の基礎となるものを明確にしてみよう。我々の教育システムにおいて、「教室の中の巨象」が、不平等の問題となっている。
不平等の問題は、各学年が20名未満の小規模な小学校と中学校においてより緊急事態となっている。このカテゴリに当てはまる学校は、15,224校ある。1993年以来、小規模校の数は20%以上減少しているが、引き続き学校の大半を占めている。
小規模校が直面している問題は深刻である。これらの学校には、自治体からの充分な資金と、学生に影響を及ぼす教育ができる教師が不足しており、多くの場合、1人の教師が複数の科目と複数の学年を指導しているのが現状である。
タイ開発研究院の国際経済諮問委員会のリサーチディレクター、Kirida Bhaopichitr氏は、小規模校の学生は、規模の大きい学校の学生に比べると成績が劣っていると指摘した。
2012年のPISAの得点では、小都市の小規模校よりも大都市の学校の学生の成績に改善が見られたことが明らかになった。大都市の学生については、直近のテストから21.3%の向上が見られたが、小都市の学生については、わずか16.1%の向上となり遅れを取っている。

 

バンコクのShrewsbury International Schoolの校長であるStephen Holroyd氏の調査結果はより説得力がある。国がタイの教育活動の惨状を嘆く一方で、タイのインターナショナルエリート校の成長は「突出」しており、問題からかけ離れたところにある、とHolroyd氏は述べた。毎年、これらのエリート校は、オックスフォード・ケンブリッジ大学とアイビーリーグの大学に、優秀な学生を送り続けている。

 

教育不平等の問題は基礎教育を越えたところにある。それは同様に高等教育のレベルを越えている。メディアが、タイのトップ大学の国際ランキングが海外の大学と比較して低いランキングであると報道する一方、より深刻な問題が、国内のさまざまな教育機関間の格差として存在している。

 

173以上の高等教育機関の中で、ほんの一握りの教育機関のみが、タイのトップクラスの学生の想像力と羨望が向けられている。これは、異なる機関間で学生の質に大きなギャップを残している。
一方、国の高等教育施策は、トップクラスの大学をより競争力のある大学にすることに重点を置いてきた。高等教育機関の競争力は重要ではあるが、一方でRajabhat大学を含むランキングの下位の大学にも注意を払い、また資源を与えるべきである。
現状では、入学制限を設けている大学に対する国の予算配分は、Rajabhat大学に与えられる予算の10倍となっている。最終的には様々なタイプの大学に入学することとなる人材のレベルの差というのは、学生の業績において不平等をもたらすことになる。

 

安全保障・国際問題研究所所長のThitinan Pongsudhirak氏は、教育改革の道のりは厳しいが、これもまた不可欠なものであると指摘した。教育はどの国においても課題を抱えているが、タイでは教育が最重要課題となってきている。
もし、若い世代に対して労働力を向上するための教育改革が行わなければ、タイは長期的な衰退と景気停滞の時期に突入する可能性が高く、タイがタイランド4.0を達成することを目指しているのであれば、問題の本質を正しく知る必要がある。それは、教育制度にまたがる不平等に対して、より一層の注意を払う必要があるということである。

 

2017年5月31日

 

PressReader:Thailand and the inequality challenges [Bangkok Post]

地域 アジア・オセアニア
タイ
取組レベル 政府レベルでの取組
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