【ニュース・スウェーデン】国内総生産に占める研究開発費支出が減少

スウェーデンは、国内総生産(GDP)に対する企業の研究開発費支出の比率が、世界で最も高い国の一つである。しかし、最近の調査によると、研究開発費全体の7割近くを占める私企業部門による投資の縮小が影響し、スウェーデンの対GDP研究開発費はこの10年間に減少している。
この調査結果は、スウェーデンリサーチカウンシルの新しい研究指標に基づき、スウェーデンとその他の国や地域とを研究の方向性の観点から比較するものである。
カウンシル研究政策部の本調査プロジェクトリーダー、Sara Monaco氏は、「当調査の目的はスウェーデンの研究政策の全体像を明らかにするものではなく、スウェーデン研究政策の最新の傾向を読み解くことに焦点を当てている」と話す。

 

<大学の研究は増加傾向>
調査によると、大学が行う研究開発の割合は全体の約30%で、スイス、フィンランド、オーストリア、デンマーク、イギリス、オランダ、ノルウェーなどと同程度の割合である。
同時にスウェーデンの大学における研究は、過去10年間で25%増えた。
スウェーデンの2013年研究開発費総支出額は、1250億スウェーデンクローナ(約1.5兆円)であり、そのうち340億スウェーデンクローナ(4100億円)は公共部門からの支出であった。研究開発費における公共支出額はこの10年間で25%増加した。
大学等における研究開発費の80%は政府の予算であり、最も増加が顕著であった医療、健康、自然科学分野では、2001年から2013年の間に研究開発費は54%増加した。しかし、私企業部門の減少がその増加を上回るため、全体で見ると減少している。
テクノポリスグループのGöran Melin氏は、相当な数の企業研究をスウェーデンに引き戻すのは大きな課題になるだろうと指摘する。「学術界は事の重大さを完全には認識していないかもしれないが、スウェーデンは2000年代に企業の投資による巨額の研究開発費を失ったことになる。スウェーデンは再び企業にとっての魅力的な投資先にならなければならない。」と言う。

 

<研究者数の増加>
この調査によって別の重要な点も明らかになった。それは、教育・研究分野で働く人口の増加である。スウェーデンは現在、研究者の割合が最も高く、その後にフィンランド、デンマーク、ノルウェーが続く。調査データによると、2015年の35,000人が「研究・教育職」に就いており、割合にすると2001年から2015年までに80%増加した。そのうち約半数が女性である。博士課程の新卒業生の男女比はおおよそ半々であるのに対し、教授の75%は依然男性である。
研究職のうち最も大きなカテゴリーを形成しているのは18,000人の博士課程学生である。これは、スウェーデンで行われる全ての研究のうち37%が博士課程学生によるものであることを意味する。彼らのほとんどは大学やカレッジに雇用されている。
したがって、「研究者の人口密度」という点では、スウェーデンはハイランクに位置する。労働人口に占める研究者の割合が、スウェーデンを上回るのはフィンランドとデンマークだけである。スウェーデンの25歳~64歳の労働者のうち、1.4%が博士の学位を取得しており、それは、スイス、オーストリア、アメリカと並ぶ高比率である。

 

<論文数は増えたものの、被引用数は伸び悩み>
さらに、調査データは、スウェーデンの大学の論文数が2002年から2014年までに8%増加したが、引用される論文数ではそれほどの増加は見られず、一人当たりの研究引用数で見るとスウェーデンは世界のトップ5にも入れないということを如実に表した。
現在トップ5はシンガポール、スイス、アメリカ、イギリス、オランダである。一方、人口1000人当たりの論文数は、スウェーデンはスイス、デンマークに続く世界第3位である。
ルンド大学及びスウェーデン王立工科大学(KTH)の教授、Mats Benner氏によると、このデータは研究に影響する。
「増え続ける研究者をどのように養うかが緊急課題となってくる。この10年間の資源価格の引き上げにより、人々は堅固なキャリアの基盤や採用制度を作るのではなく、新しく不安定な職に流れている。」と言う。

 

<研究奨励金の欠如>
「学術界はソフトマネーの獲得に奔走し、道を拓くような研究への奨励金はほとんどない。それは当然、研究の質にも影響を及ぼす。」とBenner教授は主張する。「スウェーデンは研究開発費への内部投資が取り立てて魅力的というわけではないため、私企業部門基金の減少も懸念材料である。最も緊急の課題は、大学が教員の雇用、昇進、学部の強化をより効果的に行えるようになることであり、投資家と協働して優先順位の設定や長期的な成長戦略の考案に取り組むべきだ。そのためには、現在の大学と投資家の行き詰った関係性を打破する必要がある。」と論ずる。
先のGöran Melin氏によれば、スウェーデンの科学界全体で高い質を追求する文化を再構築する必要があるという。「何十年にも及ぶ長い間、「『可』で十分」という風潮が広まってしまった。高等教育と研究の現場において、あまりにも長い間、頻繁に、お粗末な質が許容されてきた。」と言う。 

 

【出典】
University World News:New barometer reflects decline in research spending

地域 北欧・バルト三国
スウェーデン
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
行政機関、組織の運営 予算・財政
大学・研究機関の基本的役割 研究
人材育成 研究者の雇用
研究支援 研究助成・ファンディング