【ニュース・イギリス】EUの研究助成プログラムについて、英国政府が助成を保証

2016年8月13日、英国政府は、EUの“Horizon 2020”に既に採択されているプロジェクト及び英国のEU離脱前に申請されるプロジェクトに参画する英国の研究者については、その研究費を保証すると発表した。EU離脱後まで継続するプロジェクトであっても、英国財務省が必要な費用を負担するため、英国の産業界と大学は、英国がEUの加盟国である間、引き続きEUの競争的資金を受けるとともに申請も続けることができることになる。

 

本発表は、英国の科学を守るため、2016年4月から2021年4月までの間に実質ベースで£263億を配分するという、昨年の政府の歳出計画案に沿ったものになる。

 

なお、“Horizon 2020”は、世界の中での欧州の競争力を高めることを目的とした、EUの主要な研究・イノベーションプログラムで、2014年から2016年の予算総額は約€800億であり、英国は参加国の中で2番目に多い、総額約€20、全体の15.5%の予算を獲得している。

 

 

関係大臣のコメント

 

Phillip Hammond財務大臣
 “英国は、EUを完全に離脱する時点まで、加盟国であることから生じる全ての権利と義務を有しているが、英国でEUの助成を受けている多くの機関が、その助成金の流れについて再確認を求めている。そのため、ここで、秋期財政報告の前までに署名した構造投資ファンド(structural and investment funds)によるプロジェクト(※)と、EU離脱前に採択されたHorizonの研究プロジェクトについては、EU離脱後も財務省が保証することを確認する。”

 

※構造投資ファンドのうち、欧州地域開発ファンド(European Regional Development fund)には、産学連携による地域開発プロジェクトも含まれる。

 

Greg Clarkビジネス・エネルギー・産業戦略大臣
 “政府のコミットメントは、英国の世界を先導する研究力を揺るぎないものとして維持するためである。政府がHorizon 2020に係る経費を負担することにより、研究者は引き続きEUのパートナーと連携し、新技術の開発や新薬の発見、イノベーションを起こしうる研究を続けることができ、ひいてはそれが英国民に利益をもたらすことになる。”

 

Jo Johnson科学大臣
“何世紀もの間、英国は世界の科学の最先端にいたが、グローバルな知識経済国家として、優秀な研究者やイノベーターを支援することがかつてないほどに重要になっている。本日、政府としてHorizon 2020の助成を保証することにより、世界を先導する研究を英国で行い続けることの重要性を改めて示したところである。”

 

GOV.UK:
Safeguarding funding for research and innovation
Chancellor Philip Hammond guarantees EU funding beyond date UK leaves the EU

 

 

他機関の反応

 

王立協会(The Royal Society)
本日の政府の発表は、王立協会が国民投票以来主張してきたことの一つであり、これを歓迎する。EUの助成プログラムに採択されている英国人研究者について、英国政府がその採択期間中の研究助成を確約したことで、今後の交渉期間中においても、欧州のパートナーは英国の研究者と安心して共同研究を行うことができるであろう。本日の発表は、英国が引き続きオープンで協力的であり続けるという強いメッセージである。世界トップレベルの研究を進めるためには、英国の研究者は世界中の優秀な研究者と協力する必要がある。また、我々が直面する世界的な課題の多くは複数国が連携することによってのみ取り組むことができる。王立協会としては、引き続きEUや他国の対応機関と協力していくが、英国の全体的な研究費を維持し、世界的に優秀な研究者を惹きつけるとともに、世界の研究者と連携していけるよう英国の研究力を強化していくことが重要である。

 

THE ROYAL SOCIETY:Royal Society response to guarantees on EU grant funding

 

ラッセルグループ(Russell Group)
EU離脱を支持する投票結果は、大学に非常に不安定な状態をもたらしていたが、今回、我々の生命に影響しうる世界的課題に取り組むような世界トップレベルの研究を、政府が引き続き支援するということが改めて確認された。英国がEUの加盟国である間にHorizon 2020の競争的助成金に申請するものについて、政府がその研究助成を保証するという財務大臣のコミットメントは、ネットワークや連携、必要最小限の研究活動を維持する上で大きな役割を果たす。我々は、来るべき交渉において大学にとって最適な条件を確保するよう引き続き政府と協力していく。そして、欧州全体との生産的な連携を続け、科学研究の分野において世界のリーダーであり続けられるようにしていく。

 

Russell Group:Russell Group response to Government’s commitments for Horizon 2020

 

英国大学協会(Universities UK)
これは、大学にとって励みになるニュースである。英国のEU離脱までの移行期間中の英国大学に安定をもたらすとともに、欧州の研究者に対し、彼らがこれまでどおり英国の研究者と連携を続けられるという重要なメッセージを発したことになる。政府には、引き続き、英国の大学への入学を検討しているEU諸国の学生の間の不安を取り除くよう、英国がEUを離脱する前に始まる課程については、その課程修了まで、現在の授業料と奨学金等が適用されることを確認する動きを早急にとってもらいたい。

 

Universities UK:UUK responds to EU funding announcement by Chancellor

 

英国研究会議(RCUK: Research Councils UK)
Horizon 2020の英国人申請者への助成の継続に関する財務省の声明を歓迎する。英国の研究の成功は、優秀な研究者が国境を超えてパートナーと連携したり研究施設を共有したりすることによっている。Horizon 2020に係る英国人申請者の立場が明確にされたことで、英国の研究者と他国のパートナーが安心して申請できるようになる。英国研究会議とブリュッセルにある我々のオフィス、UK Research Office (UKRO) は、英国研究者の懸念と需要が、EUとの将来の関係に関する交渉において確実に検討されるよう、引き続き研究コミュニティや政府と連携していく。

 

Research Councils UK:RCUK welcomes HM Treasury statement on continuity of funding under Horizon 2020

 

 

メディア報道
BBC News:政府がEU離脱後のEU助成金を保証
Brexit: Government guarantee for post-EU funds

 

関連記事
Times Higher Education(THE):財務省がEU離脱後のEU研究プロジェクトの助成を保証
Treasury to ‘guarantee’ post-Brexit funding for EU research projects
Nature:英国政府が離脱後の研究助成を保証
UK government gives Brexit Science funding guarantee

地域 西欧、EU
イギリス
取組レベル 政府レベルでの取組
行政機関、組織の運営 予算・財政
国際交流 国際化
社会との交流、産学官連携 産学官連携
研究支援 研究助成・ファンディング